22日に閉幕した女子大会に続き、28日からは、男子のリオデジャネイロ五輪世界最終予選が開催される。
全日本の南部正司監督は、昨年から「清水邦広、深津英臣、石川祐希の3人がチームの軸」と言い続けてきた。それは今年も変わらない。
その1人、司令塔の深津も、清水、石川には絶対の信頼を寄せている。
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「清水さんは、勝負強いというか、心強い。僕は実際、『ほんと、ここ頼みます』って言うことが多いです。最終予選というのは、技術プラス、気持ちというのがすごく入ってくると思う。そういう意味では今大会は、清水さんや、上の人たちは強い気持ちが、技術以上にあると思うので、そういう人たちに最後に託すということも必要なのかなと考えています。8年前に、荻野(正二)さんが最後に北京五輪出場を決めたシーンとかはやっぱり、技術を越えたもので最後決めた、というイメージがありますから。石川は、すごい技術を持っている。彼に対しては、トスを(ネットに)近くしようとか離そうとかはあまり考えずに上げられるので、セッターとして気持ちがすごく楽です。一つ言うなら、彼の力を100%出せるように、高さをしっかり出すということだけを考えています」。
その石川の対角に入るのは、昨年のワールドカップで活躍した柳田将洋か、それとも、ブラジル挑戦を経て、今年全日本に復帰した福澤達哉なのか。その点も注目ポイントだ。
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柳田は何といってもサーブ力が魅力。また、前衛でも、ブロックを見てしっかりと打ち分けたり、リバウンドを取るなど「ネット際の細かいプレーがうまい」と深津は言う。
福澤は、ブラジルで以前よりさらに速いトスを打つようになり、今のチームでは一番の速さだ。「一歩助走で入れる筋力と技術があるからできていることだと思う。福澤さんが入った時と入らない時で、違うバレーが展開できるのかなと思います」と深津。
2人の共通の武器であるパイプ攻撃(コート中央部分からのバックアタック)も最大限にいかしたいところだ。ただ、昨年のワールドカップで高い決定力を見せたサイド陣は、相手チームに徹底マークされることが予想される。そこで、ミドルブロッカーがいかに存在感を発揮できるかが鍵となる。
その点で、今年ベテランの富松崇彰が復帰したことは大きい。深津は言う。
「富松さんは本当に機動力がある選手なので、どこからでもトスを持っていけるし、ボールをしばいてくれる。スピードがあって走り回ってくれるので、普通ならパスがちょっとズレたら入るのが遅れたりするけど、富松さんはパパーンと入ってくれる。そこに相手ブロッカーの目を引きつけられれば、今度はBパスからパイプを使ってもスペースが空くと思う。そうなれば、レセプション(サーブレシーブ)をする人も、『Bパスでもいいや』と気楽に返せるだろうし、いい展開になると思います」
女子の最終予選で日本が苦戦する様子を目の当たりにした男子の選手たちは、「やっぱり本当にすごく難しい大会なんだ」と気持ちを引き締め直した。
「すごく集中していい練習ができているし、1人1人は準備できている。あとはその点と点を結びつけて、ムード作りや信頼関係を全員で意識して戦うことだけ。プレッシャーや責任というのはもちろんありますけど、そればかり考えていたらつぶされてしまう大会だと思うので、思い切ってやることを最優先にしていきたいと思います」
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多才なスパイカー陣の能力を100%発揮させるトスを。初めての五輪最終予選に挑む25歳の司令塔は、ただそのことに徹する。
(文/米虫 紀子)