保険金サギ!恐るべき錬金術!戦慄(秘)手口

今から7年前、関西の河川敷でポリ袋に入れられた女性の遺体が発見された。
この遺体がきっかけとなり、実に巧妙な手口によるアンビリバボーな犯罪が暴かれる。

司法解剖の結果、女性は30代で、死因は紐状のモノで首を絞められたことによる窒息死と判明。
身元を示す所持品はなかった。
また、遺体から睡眠導入剤の成分が検出された。
何者かが睡眠薬で眠らせた後、殺害したのだと推測された。

遺体発見から11日後、宇津見と名乗る夫婦が警察署を訪れた。
夫・拓也は内装業を営んでいるのだが、3週間ほど前から住み込みで働いていた女性と連絡が取れなくなったという。
その住み込みの女性は、宇津見洋子、36歳。

名字が同じことから、警官は女性と親戚関係なのかと尋ねた。
すると、女性は夫・拓也の養女だという。
だが、夫婦の年齢も女性とそう変わらなく見える。
拓也の年齢を確かめると、39歳だという。

そして、洋子の写真を確かめると…それは、河川敷で発見された女性だった。
身元不明の遺体は、宇津見夫妻と同居していた36歳の女性であることが判明した。

39歳と35歳の夫婦。
なぜ夫は年の差わずか3歳の洋子さんを養女にする必要があったのか?
不自然な関係に疑惑の目を向けた警察は、直ちに捜査を開始。

さらに、拓也の取り調べを行った。
洋子さんは、拓也の妻・香織とインターネットで知り合い、住み込みの仕事に誘われた。
しかし、拓也の内装業はもう何年も経営不振で、人手は必要ではなかった。

だが、内装の仕事は上手くいっていないのにもかかわらず、今住んでいる自宅は購入したばかり。
さらに、サイドビジネス用に居酒屋の店舗まで手に入れていた。
拓也は、その資金について、父親が交通事故に遭い、その保険金を使ったと供述した。

拓也の父・久雄さんは、3年前 トラックに轢かれ、一命を取り留めたものの重い障がいが残った。
この事故で加害者の自動車保険から4000万円の保険金が支払われていた。

警察は拓也を取り調べる一方で、自宅の家宅捜索も行った。
自宅から睡眠導入剤が発見された。
それは、香織が病院で処方してもらったものだという。
だが分析の結果、成分は殺害された洋子さんの体内から検出されたものと一致。
しかし医者に言えば誰でも処方してもらえる薬だったため、決定的証拠とまでは言えなかった。

洋子さんが養女になった直後、拓也が受取人となるおよそ2000万円の生命保険がかけられていたことが判明。
保険金のことを追及された拓也は、しどろもどろになった。
だがこの時、拓也はまだ重要参考人という立場だったため、警察は彼を一旦返して、後日 話を聞くことにした。

数日後…拓也が車内で死んでいるのが発見された!
車の窓は内側から粘着テープで目張りされ、後部座席には七輪が置かれていた。
練炭を用い、拓也は自ら命を絶ったのだ。

拓也の自殺後、警察はその身辺を徹底的に洗った。
そしてある事実が判明する。
拓也の戸籍を調べてみると、拓也と久雄さんは実の親子ではなく、養子縁組を結んでいたのだ。

さらに、久雄さんはトラック事故によって、脳挫傷による全治不能の障がいを負っていた。
深刻な後遺症が残っていたが、拓也は病院の反対を押し切って退院させたようだった。
だが、拓也の自宅には久雄さんの姿はなかったのだ。
香織は、拓也が介護資格を持っている親戚に預けると言って連れて行ったと供述。
だが、この義理の父・久雄さんの一件が、驚くべき悪の手口を白日の下に晒すキッカケとなる。

拓也の自殺から4ヵ月、警察は香織を逮捕。
香織が逮捕されたのは、2年前に起きた交通事故に関わる容疑でのことだった。
その時、彼女は夫と一緒に知人の車に乗っていた。
それは、よくある車同士の追突事故、犯罪とは無縁であるように思われた。
だが、ここ数年に渡って起こった交通事故のリストを調べてみると、ある巧妙な手口が浮かび上がってきた。

リストには事故に関わった人物の名前が記載されていた。
それらの名前は、一見、違う人物に見える。
しかし、よく見ると…名字は違うが名前が同じ人物が何度も出てくるのだ。

さらに、拓也が養子縁組した宇津見久雄さんの戸籍を調べてみると、驚くべき事実が発覚した。
久雄さんと養子縁組をして、短期間で別の戸籍に移っていった人物が何人もいたのだ。
一体どういうことなのか?
それは、警察の徹底的な捜査が暴いた、拓也の恐るべき手口だった!

拓也は借金を返すために、交通事故を装う保険金詐欺を行っていた。
車の自賠責保険は、事故を起こした運転手に100%過失があると認められた場合、加害者である運転手を除き、車に乗っていた全員に適用される。
そのため同乗者が多ければ多いほど、多額の保険金が支払われるのだが、拓也はこの仕組を悪用したのだ。

この手口を教えたのは、保険代理店業をやっていた拓也の仕事仲間だった。
さらに、同じ人間が何度も保険金を受け取ったら怪しまれるため、養子縁組によって名字を変える手口まで教えていた。
その手口とは、名字を変えることで、別人が初めて保険金を請求したように見せかけるというもの。

そこで拓也は、資金繰りが大変だから助けて欲しいと宇津見さんに頼み込んだ。
お金を貸すことは無理だという宇津見さんに、お金ではなく養子縁組をして欲しいとお願いしたのだ。

宇津見久雄さんは当時、大工として拓也の下請けをしていた。
義理堅かった彼は、ずっと仕事をもらっていたことに恩義を感じたのか、拓也との養子縁組を承諾した。

そして、この保険金詐欺に味をしめた拓也は、お金に困っている知り合いに声をかけて仲間を増やし、詐欺グループを結成。
メンバーたちは、時に加害者、時に被害者となり、交通事故を装う保険金詐欺をくり返した。
また、拓也は仲間にも養子縁組をさせた。
義理の親となったのは、久雄さんをはじめ複数の人物だった。

警察の捜査によると、詐欺グループは合計20件以上の偽装交通事故を繰り返し、総額で6000万円以上の保険金をだまし取っていたという。
中には拓也の妻・香織が関わった偽装事故もあった。
香織は、この保険金詐欺容疑で逮捕されたのだ。

しかし実は、拓也が犯していた罪はこれだけではない。
更に恐るべき犯行に手を染めていた。
詐欺グループのメンバーを取り調べたところ、驚くべき告白をする者が現れた。

2007年5月…拓也は久雄さんを誘い出し、睡眠薬入りの酒を飲ませると、酩酊状態にした上で詐欺グループの仲間に引き渡した。
そして、彼らは事故に見せかけ殺害しようとしたのだ。
しかし、久雄さんは重い後遺症は残ったものの、一命はとりとめた。
そして保険金4千万円が支払われたのだが、すべて養子縁組を結んでいた拓也が手にすることになった。

だが、入院は想定外、拓也は費用がかさむことに嫌気がさしたようだった。
病院の反対を押し切って久雄さんを退院させると、当初の計画を遂行すべく、詐欺グループの仲間に預け、殺害。
遺体は近隣の山中に遺棄させた。

久雄さんの事故によって、多額の保険金を手にした拓也が、次に目をつけたのが、住み込みで働き始めた洋子さんだった。
そして3週間が経った頃、洋子さんに養子縁組を持ちかけた。
拓也は養子縁組をすれば、福利厚生などにメリットがあるなどと言葉巧みに勧め…手続きが終わるとすぐ、彼女に生命保険をかけた。
そして睡眠薬を飲ませ、詐欺グループの仲間に殺させたのだ。

その後、洋子さんの衣服に、犯人のものと思われる皮膚片が見つかり、DNA鑑定の結果、実行犯が特定された。
男は、拓也と香織に頼まれて殺害したことを自供。

一方、夫婦は何食わぬ顔で警察署を訪れ、洋子さんの失踪届を出そうとした。
警察から連絡が来た際、届けを出していないと怪しまれる、そう考えたからだと思われた。
だが、不自然な養子縁組に疑惑の目が向けられたことがきっかけとなり、すべての悪事が明るみに出ることになった。

裁判の結果、洋子さんや久雄さんを殺害した実行犯たちには、懲役16年から23年。
香織は保険金詐欺に加担、さらに夫と共謀し洋子さんを殺害したとして、2つの事件でともに有罪判決を受け、結果、懲役23年。
交通事故を偽装した保険金詐欺については、メンバーたちそれぞれに懲役2年半ほどの判決が下った。
そして、自殺した拓也は、一連の事件の首謀者として書類送検されたが、被疑者死亡で不起訴処分となった。

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