救世主はドローン 少年たちを救った奇跡の舞台裏

2018年1月、オーストラリア・東海岸に面した町・レノックスヘッド。
この日、夏休み中の高校生たちが海で泳ごうと朝からビーチを訪れていた。
しかし…ライフガードに呼び止められ、遊泳禁止になっていることを告げられた。

レノックスヘッドは人気のサーフスポットとして知られていたが、この日は特に風が強く、波が高かった。
そのため、遊泳禁止となっていたのだ。
だが、モンティとゲイブの2人は、ライフガードの忠告を聞かず、人目につかないビーチで海水浴を楽しむことにした。



ところが、海岸から少し離れた場所で泳いでいる時だった。
不意に高波が少年たちを襲った!
実はこのレノックスヘッド、サーフスポットとして知られるように、岸から近いところでも3メートルを超す高波が発生する日もあるのだ!

なんとか沈むことだけは避けられたものの…次々と襲ってくる高波に揉まれ、海岸に戻るどころか、およそ120mも沖に流されてしまった2人。
なすすべもなくパニック状態に陥ってしまった。

その頃、海岸に1人残っていた友人が、彼らが溺れていることに気がついた。
しかし…わざわざ人気のない場所を選んだ彼らのそばにライフガードがいるはずもなく…電話で救助を要請した。



ライフガード本部は、溺れている少年がいるという連絡を受け、すぐに無線で近くのライフガードに救助を要請。
通常であれば、ライフガードは、車で近くまで行き、サーフボードを使って救助活動を行う。
早ければ3分ほどで少年たちの元へたどり着けるのだが…この日は高波のため、救助にはジェットスキーなどを使わなくてはならなかった。
少年たちの元まで、準備を含めると…最低でも10分以上はかかる。
さらに、高波によってジェットスキーでさえ梶が取れず転倒し、彼らに近づく事すらできない可能性もあった。
少年たちは、高波でどんどん体力を奪われていく…救助が到着するまで、持ちこたえられるのか?



そんな時…プロペラの羽の音が聞こえてきた。
そこに現れたのは、高波により通常のルートでは近づけないと踏んだ救助隊のヘリコプター…ではなく、1機のドローンだった!

そもそもドローンとは、人が乗らずに飛行できる航空機の総称。
多くの場合、遠く離れた場所からでも操縦ができるよう、本体にカメラが搭載されている。
そのため、最近ではリモコンで操作し空中撮影ができる小型航空機として認識されることも多い。



少年たちの前に現れたドローンも、救助隊が彼らの場所を把握するために飛ばしたものかもしれなかった。
しかし、たとえカメラで位置がわかったとしても、肝心の救助本隊が近づけないのならば意味はない。
また近年世界では、直接救助ができるように浮き輪を運ぶドローンも開発されているのだが…この時、彼らの元に飛んできたドローンには…残念ながら浮き輪などがついているようには見えなかった。

そして一週間後、このことがテレビで報じられた。
なんと、絶体絶命のピンチにあった少年たちが、怪我なく生還し、テレビの取材に答えていたのだ。
そう、彼らの救出には、あの時現れたドローンが大きな役割を果たしていた!



絶体絶命のピンチに陥った少年たち。
一方その数分前、ライフガード本部…近くのライフガードたちに救助の要請をして間も無くのことだった。
近くのビーチにいたジェイ・シェリダンから応答があった。
そこでジェイからある提案がなされた。
それは…「ウェストパック・リトルリッパー」を使用するというもの。

「ウェストパック・リトルリッパー」…それこそがあの時、少年たちの頭上に現れたドローンだったのだ。
実はこれ、世界初のあるアンビリバボーな機能を搭載したスーパードローンだった!



少年たちの元に向かったスーパードローン、ウェストパック・リトルリッパー。
カメラで沖合で溺れている少年たちの姿をとらえると、リモコンで慎重に位置を調整し、ドローンから何かを落とした。
それが、水に触れると…浮き輪の様に膨らんだ!
モンティとゲイブは、すかさずそれに掴まった。
2人は浮き輪の様なものに掴まり、溺れず岸まで泳ぐことができた。
そして、浜辺に到着していたライフガードによって彼らは無事救助された。



少年たちを救ったウェストパック・リトルリッパー。
実はこれ、当時ライフセービング協会とドローン会社などが共同開発を行なっていた、最終テスト段階の水難救助専用ドローンだった。
まず、このドローンに取り付けられた救命具は、遠隔操作で切り離して落下させることができる。

さらに救命具にも工夫がされていた。
最初から膨らんだ状態だと、風に流され、落下地点がずれてしまうため、水に触れることで初めて膨らむという最新の技術が搭載されていた。



しかし、なぜテスト段階にあったドローンがこんなところにあったのか?
実は、少年たちの救助要請があった時、救助隊は偶然にもこの海岸付近で最新型ドローンの操縦訓練をしていたのだ。
そのため、救助要請を受けてから1分後。
現場から1キロほど離れた場所からすぐにドローンを出動させることができた。
そして、上空からのカメラで少年たちを発見すると、遠隔操作で救命具をドローンから切り離した。
溺れる寸前だった少年たちの命を救い出すことができたのだ!

通常の方法では救助に来れたとしても10分以上かかるはずだった。
だが、このドローンを使うことで離陸から救命具を落下させるまでにかかった時間は、わずか35秒だった。

技術の進歩により近年、災害救助や遭難救助の現場でも注目されているドローン。
今後、その活用に大きな期待が寄せられている。

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