あなたならどうする? 運命の決断スペシャル 足りないオルゴール! 夢を叶えた方法とは?


名古屋の老舗デパート、名鉄百貨店。
今から14年前、それはオルゴール売り場での奇妙な依頼から始まった。

山森 万睦(ひろちか)さんは名鉄百貨店内に、小さなオルゴール店を開いていた。
開店してまだ2年ほどだったが、お得意さんも増え、経営は軌道に乗りはじめていた。

そんなある日、閉店間際のこと…『スミレの花咲く頃』という曲のオルゴールを探しているという男性客がやってきた。
それはよく売れる曲ではなかったのだが…たまたま一台だけ置いていた。
だが…男性は、2週間後までに、この曲のオルゴールを50台、少なくても45台は、欲しいというのだ。

なぜ、50台ものオルゴールが必要なのか、その理由を尋ねると…男性は妻を亡くしたばかりだった。
彼の妻は、誰もが認める宝塚歌劇団の大ファンだったという。
若い頃から一緒に観劇に出かけ、代表歌であるこの曲を聴いた。
そんな思い出の曲だったからこそ…四十九日の時に集まってくれる妻の友人や親戚に香典返しとして、あの曲が入ったオルゴールをプレゼントしたいということだった。

男性の話を聞き、いても立ってもいられなくなった山森さんは、すぐにオルゴールメーカーに電話した。
すると幸運にもムーブメントの在庫があった。
ムーブメントとは、オルゴールの中にある音を鳴らす機械のこと。
これを様々な入れ物に収めることで、製品となるのだが…在庫があったムーブメントは30個のみ。
最低限必要な数に15個、足りなかった。

この分をメーカーに注文すればいいように思えるが、話はそう簡単ではない。
ムーブメントから制作するとなると、工場を稼働させる必要がある。
しかし 製造工場の数は少なく、注文は日本全国から来るため、当然 数カ月先まで予約で埋まっている。
2週間の短期間でとなると、難しいのは明らかだった。

この日、我々は、名古屋近郊のあるお宅を訪ねた。
荒谷 勇(あらたに いさむ)さん80歳。
この方こそ、山森さんにオルゴールを頼んだ当人である。
なんと、オルゴールは手元にあり、実物を見せてくれるという。
一体、山森さんは、どのようにして荒谷さんの夢を叶えたのか? その真相とは?

実は…山森さんは自ら、宝塚の本拠地である近畿地方を中心に、各地の店舗を回り、オルゴールを買い集めたのだ。
そして、一つ一つ音色を確認、曲のアレンジを同じものに統一することにもこだわった。

だが、これで終わりではなかった。
買い集めたオルゴールは、入れ物のデザインがバラバラ。
そこで荒谷さんの要望に合わせ、箱を三種類と決め、デザインが異なる場合、中からムーブメントを取り出し、自ら揃えた箱に付け替えた。

そしてメーカーから届いた裸のムーブメントも、不具合がないか確認しながら取り付けた。
こうした作業を、連日、深夜まで続けた。

実は、山森さんはかつて、デパートなどの一角で生花や造花を販売する会社のサラリーマンだった。
その時、たまたま近くで売っているのを目にしたのが、オルゴールとの出会いだった。
お客様が手元に長く置いて、思い入れを込めて付き合える物を扱いたい、その思いから転職を決意した、山森さん。
それから2年経った頃、出会ったのが荒谷さんだった。
そして、四十九日が行われる数日前に、予備として集めていた部品も利用し、本来のリクエスト50に近い48台を作り上げたのだ。

荒谷さんの手元にあったのは、大きさの異なる3種類のうち、最も大きなものだという。
実は、妻の入院中、仕事が忙しく なかなか側にいてあげることができなかったという荒谷さん。
このメロディには妻との思い出がつまっているのだ。
山森さんが集めたムーブメントも、しっかりと動いている。

荒谷さんはオルゴールをプレゼントした際、あえてあるものを同封していた。
それは…『このオルゴールのムーブメントは、名鉄百貨店の山森さんのご好意で日本中の在庫から、集めて準備下さったものです。』
そう、山森さんへの感謝を綴ったメッセージカードだ。

実は、荒谷さんがオルゴールに同封していたのは、山森さんへの感謝の言葉だけではなかった。
それは…法要に出席された方に向けて、荒谷さんが『妻からの言葉』という形で書いた手紙。
手紙の最後には、宝塚の公演のエンディングで歌われていた曲の歌詞が記されていた。
それは奥様の好きなものを詰め込んだ、最後のラブレターのようだった。

そして現在、山森さんは…名鉄百貨店にあったご自身のお店を閉め、スイスの世界的オルゴールメーカーに就職。
営業統括部長として、博物館や専門店など、日本全国を巡っている。
オルゴールの魅力をどう伝えていくのかを考える毎日だと言う。
もちろん、今でも直接お客様と触れ合う瞬間は、山森さんにとって大切な時間。

最後に山盛りさんはこう話してくれた。
「オルゴールというのは皆さんそれぞれ曲の思い入れがあって、そういうのが脈々と引き継がれて行きますので、いい仕事をさせていただいていると思います。」

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