全米震撼 恐怖のホテル!死を招く客室のナゾ!


今から5年前の6月8日、ノースカロライナ州ブーン市郊外のホテルの一室で…最悪の事態が起きていた。
この日、その部屋に宿泊していたのは、サウスカロライナ州から小旅行にやって来ていたジニーさんとその息子、ジェフリーくん。
親子が泊まっていたのは、2000年にオープンした比較的新しいホテル。
田舎のホテルとは思えない綺麗な内装に加え、地域では珍しい室内温水プールも完備。
客足の絶えない人気の宿だった。


チェックインした翌朝、ジニーさんの夫がジニーさんの携帯に何度も電話をかけたのだが、何度かけても誰も出ない。
そこで彼は、ホテルの従業員に部屋を確認してもらうように頼んだ。
すると、ホテルの従業員が2人が部屋で倒れているのを発見!
すぐに911に通報した。
ホテルの従業員はこの通報で「前にも起きたばっかりなんです。お願いだから来て」と言っていた。
前にも起きている…一体どういう意味なのか?


遡ることおよそ1ヶ月半、ジニー親子と同じくこのホテルに宿泊していたジェンキンス夫妻。
彼らは翌朝、部屋で倒れているところを発見された。
発見された時、彼らはすでに絶命していた。
1ヶ月半前に2人が亡くなったこの部屋、そこは…225号室。
ジニー親子の被害現場も同じ225号室だった!


ホテルの一室で立て続けに発生した2つの事件。
しかし、なぜ同じ悲劇は繰り返されたのか?
地元警察と消防は、ジェンキンス夫妻の死後、すぐに225号室を閉鎖。
原因究明のため、現場検証、および死因の調査を行ったのだが…誰かが入った形跡もなければ、室内から毒物も検出されず、検死の結果、急性心不全とされた。
その後、捜査は打ち切られ、225号室の閉鎖令は解かれた。
街では『部屋は呪われている』など、怪奇現象を恐れる声であふれた。


それから1ヶ月半後…ホテルも死者を出してしまった部屋に宿泊客を案内しない方針を取っていたのだが…
その日、担当していたフロントが新人だったため、事情を知らず、ジニー親子を案内してしまった。
そして翌日、2人は意識不明の状態で発見され、病院へと緊急搬送されたのだ。
蘇生措置の結果、母・ジニーさんは奇跡的に一命を取り止めたものの、搬送された時、すでにジェフリーくんの心肺は停止、幼い命は奪われてしまった。
その後、1ヶ月半の間に4名の死傷者を出したこの出来事は、全米で大々的に報道された。


ジニー親子の被害通報から7時間後、地元警察は2件の死の間に何か関連はないか本格的な捜査を開始。
警察は原因が分かるまで、ホテルの営業を停止するように要求、ホテル側もその要求を承諾した。
デイモン・マラテラ氏は、親会社の変更に伴い事件の6年前からホテルの経営を行っていた。
他にもノースカロライナ州に2つのホテルを展開、普段はあまり顔を出さないのだが、この緊急事態に足を運んでいた。
マラテラ氏の協力でホテルは一時閉鎖。


捜査員は、他殺、食中毒、感染症など、あらゆる可能性を調査したのだが、初日の捜査でそれらの線は薄いと考えられた。
さらに、現場となった225号室では、室内に毒物がなかったか調べられた。
この部屋には、ダブルサイズのベッド、ソファ、11部屋のスウィートルームにのみ設置された暖炉があったのだが、季節は夏…暖炉が使用された形跡はなく、部屋からは何の毒物も検出されなかった。


翌日、警察は何らかの手かがりを発見すべく、引き続きホテルの調査を行うと共に、急性心不全とされていたジェンキンス夫妻の死因についても、改めて検死局に調査を依頼。
そして警察が次に訪れたのは、前日 調べていなかった、ホテル自慢の室内温水プール。
温水プールのヒーターは、設定した水温になるように自動的に稼働するようになっているという。
その時、温水プールの温度を調整するボイラー室から「ピーピーピー」という音が聞こえてきた。
消防が先にボイラー室を調べていたのだが…ヒーターが作動した途端、持っていた計測器が反応したのだという。
そして…ボイラー室の真上にあった部屋こそ、あの225号室だった!


そして、ボイラー室と同様のものが、225号室の暖炉付近で検出された!
暖炉付近を調べてみると、暖炉の床下に配線などを収納するスペースがあった。
その中を覗いてみると、暖炉のガス管が壁から突き出ていたのだが、建て付けが悪く、ガス管と壁の間に小さな隙間が出来ていた。
ジェンキンス夫妻の死因が判明した!
そこで警察は、1階と2階の隙間がどうなっているのか調べることにした。


調査が終わると、警察はホテルの経営者・デイモン・マラテラ氏を訪ねた。
そして、死亡の原因は一酸化炭素であったことを伝えた。
一酸化炭素は、物が燃焼するときに酸素が不十分で不完全燃焼を起こすと発生する無色無臭の気体。
体内に一定量吸い込むと、一酸化炭素中毒となり、頭痛や吐き気、めまいなどの症状が出始める。
最悪の場合、死に至るケースもある。
プールのヒーターにはガスが使用され、その際に二酸化炭素が発生するのだが、このヒーターの整備がきちんとされていなかったため、一酸化炭素を発生させていたのだ!


マラテラ氏は、排気ガスは外に流れるはずで客室に流れることはないと主張した。
そもそも、1階と2階の間には、他と仕切られた空間があった。
そして、ヒーターのこの空間を通る配管で外に出していたのだが、それがちょうど225号室の真下を通っていたのだ。
ボイラー室の天井を通る排気ガス用パイプは、ところどころテープで補修されていたのだが…それを剥がすと、経年劣化によっていくつか穴が空いていた。
しかも穴が空いたそのパイプは、補修すらされず、ずっと放置されていたのだ!
そう、ここから一酸化炭素が漏れ出し、ちょうど上に位置する225号室の暖炉の床下の隙間から、部屋へと流れ込んでいたのだ!
捜査1日目に一酸化炭素が検出されなかったのは、その時 ヒーターが作動していなかったためだった。


しかし、一体なぜ ホテルはこのようなずさんな管理をしていたのか?
そこには、経営者マラテラ氏の強欲な経営方針があった。
表向きは街の人気ホテル。
顧客へのサービスや設備は充実し、外観や部屋のインテリア、客の目につく所にはお金がかけられていた。
だが、売り上げを重視し、従業員の声に耳を貸そうとせず、客の目のいかない所の費用は徹底的にカット。
事件の2年前には、温水プールのヒーターを交換したのだが、それは安価で購入した中古品だった。


さらに、その点検作業すら従業員にやらせていたのだ。
結果、このヒーターの不具合により、高濃度の一酸化炭素が排出された。
それだけではない…パイプには経年劣化による穴がいくつも発見されており、従業員は再三にわたり修理をマラテラ氏に進言したのだが、全く聞き入れなかった。
穴から漏れたとしても、それは二酸化酸素、多少漏れたところで大した問題ではないだろうとタカをくくっていたのだ。
実際は、猛毒の一酸化炭素が漏れているは思いもせずに。


経費を削減した結果、行われた修理の実態…その実際の写真がある。
お分かりだろうか? 何とずれた配管をバケツや、ビデオテープで支えるという劣悪極まりない処置がなされていたのだ!
豪華な空間を売り、人々に愛された人気ホテルの実態は、コスト削減によって修理もろくにされていない欠陥だらけのホテルだった。
余計なコストのカットは、経営者として当然のこと。
しかし、それを優先しすぎたことが、3名の尊い命を奪う原因になろうとは、考えも及ばなかったのだろう。


後日、ずさんな経営が明るみになったホテルと経営者のマラテラは、3件の傷害致死罪とジニーさんに対する傷害罪の容疑で起訴された。
マラテラは、司法取引の末、個人への起訴を取り下げさせるかわりに、会社全体の罪であることを認め、彼の会社は廃業。
その後、ジニーさんとジェンキンス夫妻の家族は、マラテラと事件全ての関連会社に対し、民事訴訟を起こし、1,650万ドル(当時の日本円で約16億3,000万円)の賠償金を受け取った。


だが、ホテルの責任であるとはいえ、ジェンキンス夫妻の検死結果が一酸化炭素中毒とすぐに判断されていれば、ジニー親子の悲劇は防げたはず。
なぜそれが急性心不全という診断に至ったのか?
その要因の1つにノースカロライナ州の慢性的な検死官不足があった。
彼らは、ジェンキンス夫妻の検死を行ったものの、死因が特定できなかったことから、血液検査をする予定だった。
しかしそれ以外にも、処理しなければいけない案件が山のようにあった。
結果、血液検査を行う前に急性心不全と発表。
その後、捜査員から再調査の要請が入ったが、2件目の事故が起こるまで放置していたのだ。


愛する息子を失うも、奇跡的に一命を取り止めたジニーさんは、同じような悲劇を生まないため、一酸化炭素中毒の危険性を訴える基金を設立。
その後、ノースカロライナ州では、ホテルで燃焼装置の置かれた空間全てに一酸化炭素の計測器設置が義務化された。

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