思わずキュンです!アンビリバボーな恋人たち【後編】

思わずキュンです!アンビリバボーな恋人たち【後編】


夢の国から始まった本当の奇跡


夢の国と聞いて、誰もが思い描くあのテーマパーク。
そこは日常を忘れ、喜びに浸ることのできる場所。
この楽園のどこかで、プロポーズした若者も多くいることだろう。
これからご紹介するのは、誰もが知るあのテーマパークを舞台に繰り広げられた、運命的な実話である。


今から38年前、マイケル・ジャクソンのスリラーが世界中で大ヒット。
日本でも原宿を中心に様々なアメリカ文化がブームを起こしていたあの年…その誰もが知るテーマパークはオープンした。
そしてちょうどこの年の4月、大手旅行代理店に就職したのが社会人1年目の大谷一夫、22歳。
希望する旅行業界の最大手に採用され、やる気に満ちあふれていた。


新入社員として最初の仕事は、テーマパークの駐車場へ毎朝7時に行き、全国各地からバスに乗ってやって来る団体客に入場チケットを配布するというものだった。
しかも、訪れる団体客、一人一人にチケットを渡さなければならなかった。
実はそのテーマパークには、団体チケットは存在しなかった。
団体専用の入口すらない。
ゲストはあくまでも ”ひとり” ”ひとり”というポリシーがあるためだった。
カップルにも一枚一枚。
家族連れにも一枚一枚。
そのポリシーのために、想像を越えた任務を課せられたのが大谷だった。


1つの団体が終わったと思えば、また別のバスから団体客が。
多い時で、1日100台以上のバスから降りてくる団体客、5千人以上に…毎日10時間近く、ひたすらチケットを一枚一枚渡し続ける。
来る日も、来る日も、単純な作業。
1台終わればまたすぐ他のバスが…そんな日々が1ヶ月も続くと、大谷は入社した時のやる気を完全に失っていた。
やりがいを感じられず、客とコミュニケーションをとることなど、もちろんない。
先が見えない辛さで、心が折れかけていた。


仕事を辞めることも頭によぎっていた…そんなある日のことだった。
ふと、目に留まったのは、同じ駐車場でテーマパークのオープニングスタッフとして働く一人の女性だった。
彼女はバスを誘導しながら、乗客達に向かって…笑顔で楽しそうに働いていた。
顔見知りになった頃、大谷は彼女にこんなことを言った。
「君さ、せっかくここで働いているのに、残念だね。他のキャラクターと一緒に働けないじゃん。」
しかし、彼女の返答は意外なものだった。
「いいえ。私 こんな素敵な仕事はないと思います。お客様が最初に出会うキャストが私なんですよ。」
自分の第一印象がそのパークの第一印象になる、それを自分が担う…こんな素敵な仕事はないと言うのだ。


翌日から大谷は、笑顔でチケットを配るように…するとお客の反応も全く変わった。
こうして、すっかり立ち直った大谷は…会社を辞めることなく、仕事を続け、積極的な仕事ぶりが認められ、入社6年目には、本社の経営企画室に異動。
最年少で異動してきたばかりにも関わらず、上司や先輩に臆することなく意見を言う、ポジティブな男になっていた。


駐車場での出来事から5年後のクリスマスシーズン。
2人の運命の歯車が動き出す。
部内で行われるクリスマス・パーティーの幹事に選ばれた大谷は、同じ部内の隣の課に所属する女性社員とともにパーティー用のプレゼントを買い出しに行くことになった。
課が違うこともあり、話をするのはこれが最初だった。
大谷は彼女に「当日もやること多いし、幹事って損な役回りだと思いません?」と言った。
すると彼女は…「ぜんぜん。私はすごくいい役割だなって思います。誰よりも先にクリスマスのパーティー気分が味わえるのが私たち幹事じゃありません?」と答えた。


脳裏にある記憶が蘇った。
確かめてみると…あのテーマパークの駐車場で出会った女性だったのだ!
本社に来るまで、大谷は都内、彼女は埼玉、別々の支店で勤務していたため、お互いの存在すら知らず、会うこともなかったのだ。
5年半ぶりの、劇的な再会を果たした2人。
大谷は彼女にこう伝えた。
「僕がここまで来れたのは、あの前向きな言葉を聞いて自分が変われたからなんだ。あなたのおかげなんです。」
さらに…「僕は今日もまた、高橋さんの言葉でポジティブになれた…ありがとう」と。


これを機に、互いに意識し始めた2人は、やがて交際をスタート。
つきあい始めて1ヶ月が経った頃、2人が出会ったテーマパークでデート。
そして、プロポーズ。
大谷がプロポーズに選んだ場所は、きらびやかなパークの中ではなく、2人が初めて出会ったあの駐車場。
生涯忘れられない、プロポーズの場所となった。


それから3ヶ月後、結婚。
優子さんは暫く共働きを続けたが、長女の出産後は専業主婦として夫を支えた。
そんな奥さんに支えられ大谷さんは、51歳で一念発起、コンサルタント会社を設立。
60歳になった現在は、とある一部上場企業で、人材育成の仕事をしているという。


大谷さんはこう話してくれた。
「物事をどう捉えるかというのは自分次第かなというのはあって、つまらないと自分で思ってしまうと、何でもつまらなくなってしまうので、物事の肯定的なところは必ずあるので、それを見ることによって、ポジティブになれる。」
今回、奥様にインタビュー撮影を打診したところ、とても恥ずかしがり屋ということもあり、出演は叶わなかった。
しかし…今年で出会いから38年…奥様は今日も変わらず笑顔で「お帰り」と迎えてくれるそうです。


若き女性を襲った過酷な試練


あなたは想像できますか?
ある日突然…今まで生きてきた過去を、すべて忘れ去ってしまった時の恐怖を。
積み上げてきた時間を…大切な人との日々…26年間、生きてきたすべての過去を失ってしまった女性。
襲いくる誰にも理解されようがない孤独と絶望。
しかし…「私を孤独と絶望から救い出してくれたのは、愛の力だったのです。」


はじまりは4年前、イギリスのロンドン近郊に住むソフィーが、友人からマッチングアプリを勧められたことだった。
ソフィーは当時24歳。
ロンドン救急サービスで、救急車の手配係として働く彼女は、仕事に誇りとやりがいを感じていた。
そのため…特に彼氏が欲しいわけではなかったが、友人にしつこく勧められたため、マッチングアプリに登録。


仕方なくアプリでマッチングした相手と適当にやりとりをしていたのだが…好き嫌いのツボが同じで、なんとなく似た者同士だと思える男性と出会った。
彼の名はジョナサン、ソフィーと同い年の建築現場で働く作業員だった。
そして…数週間後、2人はステーキ店で初対面を果たした。
お互い、気兼ねなく思ったことを言い合う2人。
ユーモアの感覚も似ていた。


それから、2人きりで遊びに行く仲になり…
1ヶ月後、クリスマスイルミネーションを見に行った時…ジョナサンが告白。
その日から、恋人同士になった2人。
以来、およそ2年にわたって、デートを重ね、様々な場所を訪れると…いつしか2人は、将来のことを語り合うように。
2人の関係は深まり、もはや共に人生を重ねていく未来に疑問を持つ事はなかった。
その時までは…


この日…ソフィーは、いつものように自宅で夜勤の準備をしていた。
すると、鼻血が出てきた。
最初はただの鼻血かと思ったが、20分経っても鼻血は止まらず、それどころか…目からも血が出始めたのだ。


数時間後…病院で目を覚ましたソフィー。
だが、彼女には、両親が誰かわからなかった。
さらに…彼女は両親だけでなく、自分の顔さえ覚えていなかったのだ!


その後の精密検査で、彼女が冒された病名が判明した。
それは…機能性神経障害。
脳と体の各神経をつなぐ信号が遮断されることにより生じたと考えられる機能障害のひとつ。
いまだ原因は解明されていない。
症状は人によって差があるものの、アメリカのある医療機関のまとめによると、年間、およそ1万人に1人の割合で発症しているという。


ソフィーに起こった症状は、言語障害、左半身の麻痺、長期記憶の喪失の3つ。
医師の診断によれば彼女の場合、言語障害や左半身の麻痺については、改善する可能性が高いとのことだったが…記憶は最悪の場合、一生戻らないこともあるというのだ。


記憶を失ったソフィーを待ち受けていたのは、想像を絶する世界だった。
彼女は、ナイフやフォークの使い方など、生活を送る上で当たり前の事ですら覚えていないものがあった。


さらに…2年間交際してきたという恋人ジョナサン。
かけがえのない存在だったはずなのに、見知らぬ人としか認識できず、何の感情も湧かない。
この時、彼女の絶望はピークに達した。
だが翌日、ジョナサンは再び見舞いに訪れた。
さらにその後も、毎日毎日、1日も欠かすことなくソフィーの元を訪れた。


その後、一通りの治療が終わり、退院することができたソフィー。
だが、記憶は戻ってこないままだった。
さらに、左利きだった彼女は残っていた左半身の麻痺により、食事をすることさえも1人でできなかった。
自分にとっては見覚えもない、「母だと名乗る女性」にやってもらわなければならない…無力感が募った。


そして、この頃何より辛かったのは、過去の記憶を失った悲しみではなく、それを失ったことすら認識できていないことだった。
幼い頃の、遠く懐かしいはずの思い出。
努力して積み上げてきたという知識やスキル。
そして、心から信じていたらしい大切な人たち。
それらの全てに対して、なんの感情も湧かない。
それは単に「孤独」という言葉では片付けられないほどの圧倒的な絶望感だった。


手の麻痺は徐々に収まってきたものの、到底 前向きになる事はできず、家に引きこもるようになっていた。
そんな時だった…ジョナサンが家を訪れ、ソフィーを外に連れ出した。
到着したのは、クリスマスのイルミネーションがきらめく街並み。
そしてジョナサンは、ここが過去に訪れたことがある場所であることを話した。
そう彼は、2年前2人が交際に至ったデートを、再び行おうと考えたのだ。
だが…ソフィーはジョナサンにこう言った。
「もう私は、あなたが愛してくれたソフィーじゃない。何もない、空っぽの人形。同情なんていらないから、私の元を離れて。」


だが、それからもジョナサンはやって来た。
そしてかつて2人で訪れた様々な場所へ、もう一度ソフィーを連れて行ったのだ。
しかし、ジョナサンはソフィーに過去を思い出して欲しかったわけではなかった。
今のソフィーと思い出を作りたかったのだ。
そして、そのことをソフィーに伝えた。
ソフィーはそれまで、過去を失った自分は、孤独なのだと思っていた。
だが、ジョナサンは今の自分と正面から向き合ってくれた。
元の恋人のおかげで『自分は一人じゃない』…そう思えるようになったのだ。


そして、およそ一年後の現在。
病気を発症してから3年後の昨年12月…ソフィーさんが番組のインタビューに答えてくれた。
ソフィーさんの体調はかなり回復し、最近では車椅子を使うことが減ってきたという。
残念ながら、未だ記憶は戻っていないという。
そして、ジョナサンさんとは…なんと一緒に住んでいるという!
最後にソフィーさんはこう話してくれた。
「何か明確なきっかけがあったわけではないのですが、ただ一緒に側にいる。その日々の積み重ねにより再び恋が芽生え、恋人の関係になることが出来たのです。そして、今この瞬間を当たり前と思わず、生きていることにも感謝しています。私を孤独と絶望から救い出してくれたのは、愛の力だったのです。」


Close×