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#2 10月1日よりスタート!ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の脚本を手がける三谷幸喜さん、メインキャラクターの1人を演じる神木隆之介さんにインタビュー

三谷幸喜(みたに こうき)さん
1961年7月8日生まれ。東京都出身。1983年に劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成し、脚本家として活動開始。手がけた作品には、ドラマ『古畑任三郎』(フジテレビ)、大河ドラマ『真田丸』(NHK)、映画『ラヂオの時間』(1997年)、『記憶にございません!』(2019年)など話題作が多数。また、2025年11月2日からは、作・演出を務める『三谷かぶき「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)~幕を閉めるな~」』の歌舞伎座公演も控えている。
神木隆之介(かみき りゅうのすけ)さん
1993年5月19日生まれ。2歳でCMデビューし、子役として注目を集める。映画『妖怪大戦争』(2005年)、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)、『ゴジラ-1.0』(2023年)、ドラマ『探偵学園Q』(日本テレビ)、連続テレビ小説『らんまん』(NHK)など多くの話題作に出演。今年、俳優生活30周年を迎えた。
  • 三谷幸喜 神木隆之介のコメディへの対応力に感激「こんなに正確に具現化してくれる俳優さんに会ったのは初めて」

菅田将暉さんが演じる主人公の演劇青年・久部三成という役に込めた思いを聞かせてください。

三谷 久部はあて書きなのですが、誤解しないでいただきたいのは、菅田さんご本人に合わせて書いたわけではなく、印象で書いているということなんです。菅田さんとは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)のときはお会いしていないですし、お会いしたのは昔、日本アカデミー賞授賞式のトイレで並んで用を足したときくらい。この作品に入って初めてシッカリ話すようになったので、それまでは全然お人柄も知りませんでした。ただ、大河ドラマでの源義経役を見たときに、今後、もっといろんな面を持った複雑な役をやってほしい、見てみたいと思ったんです。その思いから、久部というキャラクターが生まれました。

神木さんが演じる蓬莱は、久部とどう絡んでいくのでしょうか?

神木 劇中で蓬莱は、久部の演出助手になります。蓬莱にとって久部は初めて見るタイプの人間で、すごく強引だけど「僕たちを新しい場所へ連れて行ってくれるんじゃないか」という期待感も抱かせてくれるから、ついて行きたくなるんだろうな、と思いながら演じています。でも、本当に話を聞いてくれないし、暴走もするし、久部との距離感はどう保てばいいのか悩んでいます(笑)。

この役を演じる菅田さんを神木さんはどのように見ていますか?

神木 普段の菅田さんは、基本的に元気で面白い人ですが、今回一つひとつのセリフを全力で言ってくる姿は初めて見ましたし、それが今、板についた菅田さんを見ていると、すごいなと思います。久部もそうですが、菅田さん自身も僕らを引っ張ってくれる存在だということも改めて思いましたね。
三谷 このドラマは1984年が舞台で、その当時はものすごくパワフルな時代だったんですよね。その時代の色を一身に背負っているのが久部というキャラクター。それを演じている菅田さんの熱量みたいなものが、このドラマ全体を引っ張っている気がしますね。

今回、ご自身がモチーフの人物を作品に入れた狙いは何かありますか?

三谷 僕は20代後半に渋谷のストリップ劇場でバイトをしていて、ショーとショーの間にやるコントの台本を書いていました。自分にしか書けないものが何かを考えたとき、その当時のことを書きたいなと思ったのが、始まりです。なぜ1984年当時のことを今書きたくなったかと言うと、現代は、永遠に続くと思われていたものが崩れていき、みんなその不安のなかで生きている気がしているんです。でも1980年代は「永遠の夢」を実現しようとする熱気に満ちていて、そんな当時を生きる人々を描くことで、今不安を抱えている人にエールが贈れたらいいなと思い、それがこの作品を書く出発点になりました。

神木さんは当時の印象や、このドラマで描かれる若者たちの姿をどう受け止めていますか?

神木 僕は1993年生まれなので、当時のことはまったく知りませんでしたが、このドラマの世界に入り、1984年はやっぱり元気だな、と一番に思いました。今が「元気じゃない」ということではなくて、三谷さんもおっしゃったように、活気があるというか。例えば、新しく出てくるものに対するリアクションって今とはまったく違うと思うんです。当時はとにかく「うわっ!何これ!?」「え、あれが進化したの!?」と大きな盛り上がり方だったと思いますが、現代は情報があふれていて、調べれば何でもわかりますし「これは、あれでしょ」と、少し冷めた感じですよね。当時の人たちは何に対しても新鮮な気持ちで、目がキラキラしていたんだろうな、と感じました。
三谷 神木さんは、ポケベルは知らない?
神木 知らないです。もうガラケーが普通にある時代でしたね。
三谷 ちょっと先ほどの印象の話に戻るんですけど、今回、神木さんと初めてご一緒して、印象が180度変わったんです。普通に見ていると、すごくまじめな好青年ですよね。
神木 ありがとうございます(笑)。
三谷 でも、普段の彼は、とにかく人を笑わせたり喜ばせたりすることに全精力を傾けている人なんです。振ると物ボケみたいなこともやってくれるしコメディも好きなようで、自分が書いたものをこんなにも正確に面白く具体化してくれる俳優さんに会ったのは、正直初めてでした。脚本の何倍も面白くしてくれるし、若い方なのにこんな力を持った人がいるんだなと感激して。…ということを、今まじめに話している姿を見ながら思いました(笑)。

当時の渋谷の街を再現した巨大オープンセットも建てられたとのことですが、そのセットの感想を聞かせてください。

三谷 タイムスリップした感じがありましたね。特に、ストリップ劇場と坂を挟んで目の前にある古いアパートの感じはそのまま再現されていて。あの頃の自分に、「いずれこの瞬間がドラマになるよ」と教えてあげたいくらいの気持ちになりました。
神木 僕は学生時代、学校帰りに渋谷で遊ぶことはありましたが、劇中に登場する八分坂のモチーフになった地区には行ったことがなかったんです。でも、セットを見て、とにかく色が多いな、と。ナイトシーンでは、道路を濡らして撮影をするのですが、ネオンが路面に反射してすごくキレイでしたね。たくさん写真を撮りました(笑)。

取材・文:平野智枝子


『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』

放送日時:10月1日(水)スタート!毎週水曜22時~(初回30分拡大)
脚本:三谷幸喜
出演:菅田将暉 二階堂ふみ 神木隆之介 浜辺美波 ほか

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