FODオリジナルドラマ『にこたま』が描く新しい家族のかたちとは?橋本愛さん&瀬戸康史さんにインタビュー
橋本愛(はしもと あい)さん
1996年1月12日生まれ。熊本県出身。
2010年の映画「告白」に出演し注目を浴び、2012年の映画「桐島、部活やめるってよ」では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。最近では、映画「リライト」、映画「アフター・ザ・クエイク」に出演。現在、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に出演中。
独自の感性を生かしてファッション、コラム、書評などの連載を持ち幅広く活躍中。
2010年の映画「告白」に出演し注目を浴び、2012年の映画「桐島、部活やめるってよ」では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。最近では、映画「リライト」、映画「アフター・ザ・クエイク」に出演。現在、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に出演中。
独自の感性を生かしてファッション、コラム、書評などの連載を持ち幅広く活躍中。
瀬戸康史(せと こうじ)さん
1988年5月18日生まれ。福岡県出身。2005年デビュー。その後、数々の映画、ドラマ、舞台に出演し、人気を集める。2017年上演の舞台『関数ドミノ』で『第72回文化庁芸術祭』演劇部門 新人賞、2022年公開の映画『愛なのに』では『第44回ヨコハマ映画祭』主演男優賞を受賞。26年には、映画『木挽町のあだ討ち』、舞台 ケムリ研究室No.5の出演を控える。
12月26日からFODとPrime Videoにて配信開始されるドラマ『にこたま』は、渡辺ペコさんの同名コミックが原作。弁当店で働く、「あっちゃん」こと浅尾温子(橋本愛)と、出会って12年、長年同棲しているコーヘーこと岩城晃平(瀬戸康史)が、三十代という人生の岐路に立ち、迷い、流され、意地を張り…たどり着いた「新しい家族のかたち」が描かれます。
ハチマガでは、あっちゃんとコーヘーを演じる橋本さんと瀬戸さんにインタビュー。本作への思いや演じた役柄への共感、共演の感想やお互いの印象などを聞きました。
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橋本愛「キラキラした笑顔の瀬戸さんが演じることで物語の説得力が増す」
まずは、原作を読んだ際の感想を教えてください。
橋本
あっちゃんの‟選択“に、私自身も救われたような気がしました。自分の気持ちと世間から求められることとのギャップや、年齢や性が絡むからだの切実な問題など、共感することがとても多かったです。きっと世の中にたくさんいる、あっちゃんと重なる生き方をしている人たちが、少しでも息をしやすく、生きやすくなったら「素敵だな」と思いました。
あっちゃんは、恋愛感情が薄く、「恋」や「愛」が分からなくなっています。でも、「恋」や「愛」という言葉は自分から生まれたものではなく、外から名付けられたものだし、自分がその言葉を使っていいのか悩んでいる部分もあるのかなと。私も同じように感じることがあるので、「私にとっての“好き”とはなんだろう」と考え直すきっかけにもなりました。
瀬戸 あっちゃんとコーヘーの関係性を素敵だなと思いました。コーヘーはとても難しい役なので、自分がどこまでコーヘーの微妙なニュアンスを出せるのか、挑戦してみたい気持ちになりました。2人がそれぞれの問題にどう向き合い、次の1歩をどう踏み出すのか。その描き方が、悲しい方向ではなく希望のある方向に進んでいるように感じられて、とても好きな作品です。
あっちゃんは、恋愛感情が薄く、「恋」や「愛」が分からなくなっています。でも、「恋」や「愛」という言葉は自分から生まれたものではなく、外から名付けられたものだし、自分がその言葉を使っていいのか悩んでいる部分もあるのかなと。私も同じように感じることがあるので、「私にとっての“好き”とはなんだろう」と考え直すきっかけにもなりました。
瀬戸 あっちゃんとコーヘーの関係性を素敵だなと思いました。コーヘーはとても難しい役なので、自分がどこまでコーヘーの微妙なニュアンスを出せるのか、挑戦してみたい気持ちになりました。2人がそれぞれの問題にどう向き合い、次の1歩をどう踏み出すのか。その描き方が、悲しい方向ではなく希望のある方向に進んでいるように感じられて、とても好きな作品です。
原作の渡辺ペコさんは『1122』、『恋じゃねえから』など、パートナーシップや家族のあり方をテーマにした作品で人気です。渡辺ペコ作品の魅力をどう感じていますか?
橋本
渡辺ペコさんの作品は大好きで、昔からよく読んでいます。誰も切り込んだことのない部分を開いて見せてくれる‟強い感情“が土台にあり、その上で理性的に描かれている印象です。考え抜いた末の人生の選択、人とのコミュニケーションなど、自分だけでは気づけなかった視点を与えてくれます。自分自身と重なるところも大いにあるし、「こういう思いで生きている人がいる」と実感できるので、私にとってバイブルのような存在ですね。
瀬戸 重たい題材を軽いタッチで投げかけてくれるので、テーマがすっと体に入ってくる印象です。多様性が今ほど定着していない時代から、いろいろな視点で作品を描かれていて、世の中の見え方やアンテナの感度が優れている方だと感じています。
瀬戸 重たい題材を軽いタッチで投げかけてくれるので、テーマがすっと体に入ってくる印象です。多様性が今ほど定着していない時代から、いろいろな視点で作品を描かれていて、世の中の見え方やアンテナの感度が優れている方だと感じています。
相手役として共演するのは初めてとのことですが、役柄を通したお互いの印象を教えてください。
橋本
コーヘーは確かにあっちゃんの信頼を裏切る行為をしてしまいますが、同時に誰よりも誠実で正直だからこそ、あっちゃんも悩むのだと思います。そんなコーヘーを、キラキラした笑顔の瀬戸さんが演じることで物語の説得力が増すというか(笑)。すごく愛らしくて、コーヘーが瀬戸さんでとてもありがたいです。
瀬戸 橋本さんにはとても、あっちゃんらしさを感じています。橋本さんは素の部分もとても愛らしく、よく笑ってよく食べる方。あっちゃんが弁当店で働いているという設定もあり、本作の食卓にはいろいろなおいしい料理が並ぶのですが、橋本さんは撮影で出たイカ墨料理もこっそり食べていました。
橋本 我慢できずに、全部食べてしまいました(笑)。
瀬戸 そういうお茶目な人柄にも、あっちゃんらしさを感じます(笑)。クールそうに見えて、実はよく笑うんですよね。波長が合うので、お芝居もとてもやりやすいです。脚本には書かれていない部分や、長回しのシーンなど、俳優としての力量が問われる場面で頼もしさを感じています。
瀬戸 橋本さんにはとても、あっちゃんらしさを感じています。橋本さんは素の部分もとても愛らしく、よく笑ってよく食べる方。あっちゃんが弁当店で働いているという設定もあり、本作の食卓にはいろいろなおいしい料理が並ぶのですが、橋本さんは撮影で出たイカ墨料理もこっそり食べていました。
橋本 我慢できずに、全部食べてしまいました(笑)。
瀬戸 そういうお茶目な人柄にも、あっちゃんらしさを感じます(笑)。クールそうに見えて、実はよく笑うんですよね。波長が合うので、お芝居もとてもやりやすいです。脚本には書かれていない部分や、長回しのシーンなど、俳優としての力量が問われる場面で頼もしさを感じています。
俳優として「見習いたいな」と思う部分はありますか?
瀬戸
橋本さんは、監督からの細かいニュアンスに対しての注文も、自分の中できちんと理解して瞬時に表現できるスキルがある。繊細な表情、声のトーン、目線など、どれも上手ですごい。影響を受けて、僕自身のスキルも引き上げられている気がします。
橋本 (照れながら)本当に嬉しいです。私も瀬戸さんに対して同じ気持ちです。瀬戸さんとのお芝居は、同じシーンを何度繰り返しても毎回新鮮に感じられます。集中力が切れてくると、つい「さっきやったこと」を再生してしまいがちですが、瀬戸さんと一緒だと踏ん張らなくても、また初めての出来事として体験できるのでありがたいです。コーヘーとしてそこに存在してくださることに感謝しています。嘘のない、曇りのない瞳で笑うことって、すごく難しいことなので、本当にすごいなと思います。私にはなかなかできないことだと思うので。
瀬戸 できるよ(笑)!
橋本 ありがとうございます。頑張ります(笑)。
橋本 (照れながら)本当に嬉しいです。私も瀬戸さんに対して同じ気持ちです。瀬戸さんとのお芝居は、同じシーンを何度繰り返しても毎回新鮮に感じられます。集中力が切れてくると、つい「さっきやったこと」を再生してしまいがちですが、瀬戸さんと一緒だと踏ん張らなくても、また初めての出来事として体験できるのでありがたいです。コーヘーとしてそこに存在してくださることに感謝しています。嘘のない、曇りのない瞳で笑うことって、すごく難しいことなので、本当にすごいなと思います。私にはなかなかできないことだと思うので。
瀬戸 できるよ(笑)!
橋本 ありがとうございます。頑張ります(笑)。
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瀬戸康史「人生の大きな出来事は、意外と突然やって来る」
撮影で印象に残っていることはありますか?
瀬戸
登場するご飯が本当においしくて。昼ご飯も撮影用のご飯で済ませてしまうことがありました。
橋本 この前は、重要なシーンに出てくるうどんを丸ごと1杯いただいて、お昼ご飯にしました。さらに、ケータリングもおいしかったので2人分を食べてしまいました(笑)。あと、撮影とは関係ないのですが、瀬戸さんは支度中によく鼻歌を口ずさんでいて、「同じ星の人だな」と感じました。私は歌うのを我慢しているので(笑)。
瀬戸 すみません、僕は我慢できていませんでした(笑)。今度はぜひ一緒に歌ってください。
橋本 じゃあ、私も我慢しなくていいのかな。いつかハモりたいですね(笑)。
橋本 この前は、重要なシーンに出てくるうどんを丸ごと1杯いただいて、お昼ご飯にしました。さらに、ケータリングもおいしかったので2人分を食べてしまいました(笑)。あと、撮影とは関係ないのですが、瀬戸さんは支度中によく鼻歌を口ずさんでいて、「同じ星の人だな」と感じました。私は歌うのを我慢しているので(笑)。
瀬戸 すみません、僕は我慢できていませんでした(笑)。今度はぜひ一緒に歌ってください。
橋本 じゃあ、私も我慢しなくていいのかな。いつかハモりたいですね(笑)。
本作では、2人の日常生活が丁寧に描かれています。何気ない生活シーンの役割についてはどう思いますか?
橋本
このドラマでは、特にご飯が美味しそうに見えるべきだと思っています。あっちゃんは、自分の人生の選択としてご飯を作ることを心から楽しんでいて、家庭内の役割としてではなく、「生きるために食べる・食べるために生きる」といった原点にいる人だなと感じます。私はそういう強さを持った人に憧れと尊敬の念を抱いているので、生活シーンによって、あっちゃんのそういう強さが伝わるといいなと思っています。
瀬戸 ドラマの中で日常を描くのは本当に難しいことだと改めて感じています。例えば、箸を取る動作や、冷蔵庫からお茶を取るといった一つひとつが、その家で暮らしているからこそ自然でスムーズにできないといけない。何気ない動作こそ丁寧にやらなければと、いつも考えています。今回も、セット内の空気感に馴染めるように意識しています。
瀬戸 ドラマの中で日常を描くのは本当に難しいことだと改めて感じています。例えば、箸を取る動作や、冷蔵庫からお茶を取るといった一つひとつが、その家で暮らしているからこそ自然でスムーズにできないといけない。何気ない動作こそ丁寧にやらなければと、いつも考えています。今回も、セット内の空気感に馴染めるように意識しています。
人生において大きな決断をする場面が描かれますが、お2人が大きな決断をするときに大切にしていることは何ですか?
橋本
私はいつも「死に際」をイメージしています。年齢的に、結婚や出産も現実的になってきました。自分がやりたいこと、やるべきこと、後悔しそうならやっておいた方がいいことなど、迷いも多いです。でも、この悩んでいる時間もきっと財産になるとも思っていますし、どのような選択をしようとも、後悔のないように生きていきたいです。
瀬戸 僕はもっとシンプルに感覚で決めることが多いです。「面白い」か「面白くない」か。それぐらいの感覚で判断していて、自分の直感を信じています。自分にとっては、結婚したことも大きな決断でしたが、それも本当にある日突然やってきた感じがしていて。人生の大きな出来事は、意外と突然やって来て決まるものだなと思いました。
瀬戸 僕はもっとシンプルに感覚で決めることが多いです。「面白い」か「面白くない」か。それぐらいの感覚で判断していて、自分の直感を信じています。自分にとっては、結婚したことも大きな決断でしたが、それも本当にある日突然やってきた感じがしていて。人生の大きな出来事は、意外と突然やって来て決まるものだなと思いました。
それでは最後に、本作をどんな人に見てもらいたいか教えてください。
橋本
人に理解されにくい感情や考え方を持っているため、「普通はこう思うよね」と言われて、「自分はおかしいのかな」と悩んだ経験がある人もいるのではないでしょうか。そんな人に、「こういう人もいるんだ」ということを感じてもらえたら嬉しいです。
特に、あっちゃんは恋愛に対して確信が持てない人物です。だからこそ、「恋や愛とはこういうものだ」とはっきりした考えを持っている人にも、「こういう感じ方や考え方をする人がいるんだ」と思って見ていただけたらありがたいです。
瀬戸 人生の選択に悩んでいる人はきっと多いと思います。ここに登場する人物たちは、悩みながらも力強く、決して大きな一歩ではないかもしれませんが、少しずつ前へ進んでいます。立ち行かなくなって、何かを諦めてしまいそうになっている人に、少しでも勇気を届けられる作品になればと思っています。
特に、あっちゃんは恋愛に対して確信が持てない人物です。だからこそ、「恋や愛とはこういうものだ」とはっきりした考えを持っている人にも、「こういう感じ方や考え方をする人がいるんだ」と思って見ていただけたらありがたいです。
瀬戸 人生の選択に悩んでいる人はきっと多いと思います。ここに登場する人物たちは、悩みながらも力強く、決して大きな一歩ではないかもしれませんが、少しずつ前へ進んでいます。立ち行かなくなって、何かを諦めてしまいそうになっている人に、少しでも勇気を届けられる作品になればと思っています。
取材・文:藤本昌
撮影:西谷圭司
『にこたま』(全8話)
■配信:12月26日(金)20時~FOD&Prime Videoで1話・2話同時配信開始
以降毎週金曜日20時 最新話配信
※配信日時は予告なく変更になる場合があります。予めご了承ください。
※FODでは1話無料
※Prime Videoでの視聴には会員登録が必要です
■原作:渡辺ペコ『にこたま』(講談社「モーニング」所載)
■出演:橋本愛、瀬戸康史/比嘉愛未 他
■スタッフ:
監督:瀬田なつき/椿本慶次郎
脚本:政池洋佑
