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ドラマ『ヤヌスの鏡』で、
ふたつの人格を持つ主人公を演じる
桜井日奈子さんにインタビュー!
桜井日奈子(さくらい ひなこ)さん
1997年4月2日生まれ。岡山県出身。2014年、「岡山美少女・美人コンテスト」でグランプリを獲得。“岡山の奇跡”として話題となる。2016年、連続ドラマに初めて出演。以後、『THE LAST COP/ラストコップ』、『僕の初恋をキミに捧ぐ』、映画『ママレード・ボーイ』、『ういらぶ。』、CMなどで活躍。趣味は、女子トーク。特技は、フリースロー(バスケットボール)。
8月16日に配信がスタートするFODオリジナル連続ドラマ『ヤヌスの鏡』で、主演を務める桜井日奈子さんにインタビュー。
『ヤヌスの鏡』は、1981年から1982年に「週刊セブンティーン」にて連載された宮脇明子原作の人気漫画。厳格な家庭に育つ優等生の高校生・小沢裕美(オザワ・ヒロミ)が、厳しい祖母に閉じ込められた納戸の中で、鏡台を見つけたことをきっかけに“ユミ”という別人格の不良少女に変貌してしまう姿を描いた作品である。
1985年にフジテレビでドラマ化され、大きな話題となった今作が34年の時を経て再び映像化される。桜井さんが演じるのは、おとなしい優等生・ヒロミと夜の繁華街に現れる不良少女・ユミというふたつの人格を持つ小沢裕美。まるで正反対の人格を演じ分けるという難しい役どころに挑戦している桜井さんに、現場でのエピソードや、役作り、気になる見どころを聞きました。
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演じたことがない役どころで
不安よりも、楽しみの方が大きかった
このドラマのオファーを受けた時は、どんなふうに思われましたか?
お話をいただいてから原作を読ませていただき、不良少女のユミのような役は今まで演じたことがなかったですし、しかも、もう一人のヒロミは正反対の人格で。こんなにも面白くてやりがいのある役を演じられるのか、とすごくワクワクしましたし、うれしかったです。不安よりも、楽しみの方が大きかったですね。
ヒロミとユミという2役を演じる上でどんなことに注意しましたか?
ヒロミは、近しい役をこれまでに演じたことがあったのでイメージがしやすかったですけど、ユミのような「目的のためなら犯罪もいとわない」不良少女は演じるのが初めてでした。ユミの、何も恐れるものがない、まぶしいほどの自由奔放さ、内からにじみ出るような余裕というか…。それが彼女の魅力であり、見ている人が憧れる部分なんだろうな、と。だから、無理に強がって見えないように気をつけようと思いました。
内からにじみ出る余裕というのは、表現するのが難しそうですね。
難しかったです。“にじみ出る”というのがポイントで、それを“出そう”としたら不自然に見えてしまいますから。そこは、その都度チェックしていただきながらやりました。立ち方ひとつにしても、腕を組むと強がっているように見えてしまうので、手をポケットに入れてみたりですとか…。そんなふうに少しずつ作っていきました。
ヒロミとユミ、それぞれのキャラクターをどう捉えていますか?
ヒロミは、本当に不器用な子だなと思います。おばあさま(国生さゆり)から折檻(せっかん)を受けるシーンでは、どんな理不尽なことで怒られても、「私が悪いんだ」と思うんです。どうしてもうちに閉じこもってしまって、声を上げられなくて。そういうシーンが重なると、精神的にも肉体的にも、演じていて辛くなることもあります。
ユミは、ヒロミとは正反対で、もうすべてが計算通り。何もかも手のひらの上で転がすんです。ナイフで腕を切られて血が出ても、動じることなく不敵な笑みを浮かべていたり…。ゾッとするけど「ああ、かっこいい」って思います。私も原作を読んでユミに憧れた読者の一人でした。
ユミは、ヒロミとは正反対で、もうすべてが計算通り。何もかも手のひらの上で転がすんです。ナイフで腕を切られて血が出ても、動じることなく不敵な笑みを浮かべていたり…。ゾッとするけど「ああ、かっこいい」って思います。私も原作を読んでユミに憧れた読者の一人でした。
おばあさまとのシーンは迫力満点ですね。ヒロミが追い込まれていく様子は、見ていても苦しくなるほどでした。
国生さんが、本読みの段階から全力でぶつかってきてくださって。作品に対する思いや向き合い方も、すごく勉強になりました。折檻のシーンでは、実際に叩かれることもあり、「痛い」という感覚もあったんですけど、それはヒロミとして存在するために必要な痛みでした。
ヒロミの人格から乖離(かいり)してユミが生まれるのは、おばあさまが大きな原因となっているのですが、国生さんが演じてくださったことで、そこに大きな説得力が生まれたと思っています。
ヒロミの人格から乖離(かいり)してユミが生まれるのは、おばあさまが大きな原因となっているのですが、国生さんが演じてくださったことで、そこに大きな説得力が生まれたと思っています。
折檻のシーンは臨場感がありましたが、実際に叩かれていたんですね。
もちろん、体にタオルを巻いたり、ケアしながらでしたが、お互いに全力でお芝居をしているので当たることもありました。だからこそ、臨場感のあるシーンになったのかなって。国生さんは、カットがかかると、すごく心配してくださって。とてもやさしい方でした。でも、折檻のシーンはまとめて撮ることもあって。たくさん泣いてしまい目が貼れてしまって、それを冷やしながら撮影するのが大変でした(笑)。
今なら虐待と言われる厳しさですよね。
本当ですよね。「女子高生が恋愛だの、そんな汚らわしい!」っておばあさまが怒るんですけど、昔はあったとしても、今は「え、そんなこと言うの?」みたいな感じで。それで納戸に閉じ込められて怒られちゃうって、スゴイ理不尽だなって、私は思いました(笑)。でも、そこに、反発できないのがヒロミで、逆にユミは、怒りとかネガティブな気持ちを無視し続けたヒロミを「変えなきゃ」と思っていて。その正反対の人格が、自分が抱えている心の闇や葛藤に、どれだけ勇気を出して向き合えるか、という話なのかなと感じました。
演じた役柄に共感できる部分はありましたか?
ヒロミにすごく共感できたところがありました。おばあさまにすごく厳しくされるんだけど、そこに愛を感じた時に、ヒロミは苦しくなってしまうんです。ただ厳しいだけではなく、自分のことを思って言ってくれている、と感じた時に、それを受け入れざるを得なくて。完全に突き放せないんです。自分の弱さを強く感じて「もっとこうしなきゃ」と思ってしまう。
実は最近、私も同じようなことを実感したことがあって。身近にすごく注意してくださる方がいて、厳しいことを言われますけど、それは私のことを思い、期待してくれているから、ということを理解できた時に、やっぱり悲しくなってしまって。「なんで私はこんなことができないんだろう…」って。ちょっと、そういう部分がヒロミと重なりました。だから、ヒロミを演じている時は、涙も自然に出てきた感じがします。
実は最近、私も同じようなことを実感したことがあって。身近にすごく注意してくださる方がいて、厳しいことを言われますけど、それは私のことを思い、期待してくれているから、ということを理解できた時に、やっぱり悲しくなってしまって。「なんで私はこんなことができないんだろう…」って。ちょっと、そういう部分がヒロミと重なりました。だから、ヒロミを演じている時は、涙も自然に出てきた感じがします。
次回公開の桜井日奈子さんインタビュー#2ではプレゼントのお知らせもあります!
取材・文 鈴木 知子
撮影 今井 裕治
FOD連続ドラマ『ヤヌスの鏡』
8月16日(金)深夜0時配信開始
毎週金曜日0時最新話配信
原作:宮脇明子『ヤヌスの鏡』(集英社文庫<コミック版>刊)
脚本:阿相クミコ 青木江梨花
出演:桜井日奈子、白洲 迅、塩野瑛久(男劇団 青山表参道X)、仁村紗和、森マリア/萩原聖人、国生さゆり
