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#2 カツオが独立、ワカメが留学、マスオさんに病気の兆し!?磯野家に訪れた危機にサザエが奮闘!舞台『サザエさん』公開最終稽古レポート

舞台『サザエさん』が6月5日(木)に明治座で開幕しました。

本作は、長谷川町子さん原作の国民的アニメ『サザエさん』を舞台化したもので、アニメから10年後の磯野家やフグ田家をとりまく人々を描き、2019年に初めて上演。アニメそのままの温かくて愉快な世界が描かれ、2022年には再演もされました。

そして、2025年。三度目の公演が行われることになり、主人公のフグ田サザエ役で藤原紀香さん、フグ田マスオ役で葛山信吾さん、磯野波平役で松平健さん、磯野フネ役で高橋惠子さん、タマ役で酒井敏也さんが続投。

さらに、磯野カツオ役にWキャストで草川直弥(ONE ‘N ONLY)さんと佐藤友輔さん、磯野ワカメ役に平尾帆夏(日向坂46)さん、フグ田タラオ役にこちらもWキャストでwink first(TRAINEE)の藤代翔真さんと松﨑光さんが起用され、フレッシュな魅力を発揮しています。

ハチマガでは、初日前日の6月4日(水)に行われた公開最終稽古の模様をレポート。思わずホロリとしてしまったストーリーとキャストの熱演をお伝えします。

<アニメのエンディングでおなじみ!サザエが笛を吹いて家族を誘導>

本作で描かれるのは、誰もが知る家族の、誰も知らない10年後――第1幕「10年後のサザエさん」、第2幕「タマがいなくなった」、第3幕「磯野家の団欒」の3本を、2回の休憩をはさみ、約3時間の上演時間で届けます。

冒頭、サザエ役の藤原さんが緞帳の前に立ち、「サザエでございまぁす」と自己紹介。そして、アニメのエンディングに毎回、登場するじゃんけんを客席に向かって行い、観客を“サザエさんワールド”へといざないます。
続いて、スクリーンに映し出されたアニメのイラストとともに、キャストが一人ずつ登場し、藤原さんが笛を吹いて手招きをしながら誘導。縦1列に並んだサザエさん一家が家の中に入っていくという、アニメのエンディングでおなじみの光景を再現します。
そして、物語がスタート。会社を定年退職し、盆栽いじりに精を出すなど悠々自適な日々を過ごす波平に対し、大学生になったカツオは勉強もほどほどにレストランでのアルバイトに明け暮れ、服飾の専門学校に通うワカメは課題に追われる日々。

マスオは部長に昇進してから帰宅が遅くなり、タラオは高校受験の真っただ中で、家族そろって食卓を囲むことも少なくなり、フネの相手をしてくれるのは愛猫のタマだけ。

そんな中で迎えた波平の誕生日。この日ばかりは皆で夕食をとろうと、サザエは張りきって買い物に出るも財布をなくしてしまう始末。フネも波平の好物をたくさん用意し、家族の帰宅を待ちますが、マスオ、カツオ、ワカメに急用が入り、ヘソを曲げた波平は三河屋のサブちゃんと飲みに出かけてしまいます。

深夜、遅くなったことを詫びるカツオとワカメでしたが、酔った波平は日頃の不満から「バッカモーン!」とカミナリを落とし、親子の仲が険悪に。追い打ちをかけるように、マスオは「最近、めまいがする」と体調の異変を感じ始め、磯野家の危機を察したのか、タマが忽然と姿を消してしまう…というストーリーです。


<藤原紀香を中心に、磯野家&フグ田家が抜群のチームワークを披露>
サザエに扮した藤原さんは、まわりを明るく照らす太陽のような存在で、そのポジティブオーラに自ずと惹きつけられ、マスオ役の葛山さんはちょっとおっちょこちょいなサザエを月のような穏やかさで支えます。
フネ役の高橋さんは大海のような広い懐で家族を温かく見守り、なぜか、フネとだけ会話ができるようになったタマに扮した酒井さんと、微笑ましいやりとりを繰り広げます。
波平役の松平さんは愛される昭和の“頑固親父”を熱演。家族の前では威厳のある父でいながら、夢に登場するご先祖さまの前では子どもたちの成長の裏に秘めた悲哀をもらし、この世代ならではの孤独を表現します。
そして、カツオ、ワカメ、タラオ役のキャストは、人生の岐路で抱えた複雑な思いを瑞々しい演技で披露したほか、穴子さん役や花沢さん役のキャストはアニメからそのまま飛び出してきたかのようなお芝居で作品を盛り上げました。

『サザエさん』というとドタバタストーリーを想像しがちですが、本作で描かれるのは、年齢を重ねたことで浮かび上がるそれぞれの悩み。
大好きな家族のそばにいたいものの、夢のためにいつかは家を出なくてはならないというカツオやワカメが抱えた不安。タラオとヒトデ(フグ田家の長女。今回は林間学校のため登場せず)が成長し、いつまでも義父母に甘えていてはいけないと、一家の主として考え始めたマスオ。

子どもたちの成長にどこか寂しさも感じる波平とフネ。そして、ギスギスし始めた家族の空気に小さな胸を痛めるタラオとタマ。

そんな一家をサザエが架け橋となってつなぎ、家族の絆をとり戻していきます。
思わず目頭が熱くなるストーリーはもちろん、一家の愉快なやりとりに爆笑し、アニメでおなじみのナンバーには自然と体が左右に揺れ、気づけば“サザエさんワールド”のとりこに。

大切な家族を思い出す、大好きな人たちに会いたくなるハートフルストーリーです。

取材・文:荒垣信子
撮影:鷹野政起


舞台『サザエさん』公演概要

原作:長谷川町子
脚本・演出:田村孝裕
【東京公演】明治座 6月5日(木)~17日(火)
【大阪公演】新歌舞伎座 7月5日(土)~8日(火)

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