明暗分かれたボランチ、違いを生んだ柏木と消えた遠藤

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日本代表は現地時間17日、2018年W杯アジア2次予選でアウェイのカンボジア戦に臨み、2対0で勝利を収めた。この日はボランチとしてスタメン出場した遠藤航は前半終了と同時にお役御免となった一方、代わりに交代出場した柏木陽介が攻撃を活性化させてゴールにも絡む活躍を見せ、両者の明暗が分かれる格好となった。

8月9日の東アジアカップ・中国戦以来の先発出場となった遠藤だったが、指揮官の期待に応えることはできなかった。

「縦、前というよりサイドチェンジだったりとかで横に揺さぶりながら、クロスで終わったりとか、自分がクロスに入って行ったりといったことをイメージしていたんですけど、サイドにも中にも人がいて、自分はフリーなんですけど、どこにボールを付けるのかというところで難しさは少しありました」

カンボジアが5-4-1のフォーメーションでブロックを敷いてきたため、ボランチは相手からプレッシャーを受けることは少なく、時間とスペースを与えられていたが、その状況下で相手を揺さぶるような効果的な一手を打つことができなかった。

チェンジ・オブ・ペースを狙うようなダイレクトパスもなく、常に止めて、蹴るという一定のリズムでプレーしていたため相手も守備を整えやすく、サイドチェンジのパスも分かりやすい展開で出していたため、相手を揺さぶる効果はほとんどなかった。フィニッシュに直結するようなラストパスもなかった。

一方の柏木はそれとは対象的なプレーを見せた。開始早々、いきなり絶妙の浮きパスをカンボジアDFラインの裏に通し、それがPKを誘発。キッカーを任せられた岡崎慎司が決められなかったためゴールにはつながらなかったが、前半の沈滞ムードをいきなり払拭する展開を生み出した。

柏木はその後も積極的にDFラインの裏にパスを出して、チャンスを量産した。ノールックパスや、パスコースを変えるフェイント、緩急をつけたボール配給を随所に織り交ぜるなど持ち前の創造性も発揮。「裏を狙ってセカンドボールといいうのも全然ありなんじゃないかというところと、みんな、見てからキックという感じだったから、そうじゃなくてノールックで相手の逆を付けるとつけると思っていた」。柏木のゲームメークに呼応するかのように、前半は沈黙していた攻撃陣も目を覚ましてゴールに迫った。

ボランチ一枚の交代でゲーム内容は大きく変わった。ハリルホジッチ監督も「前半はまったく満足していない」と不満を示す一方で後半に関しては評価し、「彼が入っただけでゴールに近づくこともできたし、PKも得ることができた。柏木が後ろからの組み立てで必ず必要な選手だし、ダイヤゴナルのパスが入ったし、相手の背後にもパスを送ることができた」と柏木の出来を称えた。

時間の経過とともにカンボジアの足が止まっていったのは確かだが、後半開始直後から柏木のゲームメークによって内容が劇的に改善していった事実は見逃せない。遠藤も「前半よりは出しやすいように見えましたけど、自分自身のプレーはミスも多かったし、代えられても仕方ないなと思います」と不出来を素直に認めた。

ただ、カンボジア戦は不調に終わった遠藤だが、東アジアカップでは攻守にわたって高水準のプレーを見せ、ボランチと右サイドバックをこなせるユーティリティー性もアピールできていた。東アジアカップで戦った韓国や中国と比較して、カンボジアが強いわけでもない。次こそ本来のクオリティを示すべく、この日の悔しさを糧にしてクラブでさらなる研鑽を積んでいく。

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